釈迦如来坐像
作者:奥田俊昭
制作年:2018年
作者からの一言:
『一昨年の作品に截金をしてもらいました。グッと値打ちが上がったように思います。』
※釈迦如来(しゃかにょらい)とは
仏教の開祖である釈迦が悟りを得た姿をあらわしています。釈迦が説法を説いている姿が一般的で、螺髪(らほつ)と呼ばれる小さくカールした髪の毛が特徴の一つ。装飾品は一切身に付けていません。
広目天(こうもくてん)
作者:荘村泰治
制作年:----年
作者からのメッセージ:
私は学生のころから仏像が好きで、いつかは自分で仏像を彫りたいと思っていました。60歳過ぎて自由な時間ができたので、彫刻を始めようと思ったのですが、木彫は彫り方もわからず、材料や道具の調達が大変そうなので、まず簡単そうな塑像を作ろうと考えました。
最初に取り組んだのは、大好きな仏像の一つで塑像である東大寺の広目天です。まず仏頭の製作を始めましたが、全部粘土で作るのは大変なので、身近にあった発泡スチロールのブロックで顔の概形を作り、そこに粘土を貼り付ける方法で進めました。何とか顔ができたので、次に体の製作に取り掛かりました。本によると東大寺の広目天の製作法は木で骨組を作り、そこにワラを巻き、その上に荒土、中土を付け、そして仕上げ土で細部部を造形する方法で製作されたと書いてありました。しかし、そのような材料は手に入らないので、木で骨組を作り(図1)、そこに発泡スチロールを両面テープで貼り付け(図2)、それを削って概形を作り、その上に粘土で細部を造形する方法によって、初めての塑像が完成しました(図3、4)。
日本の仏像では、塑像の作例は奈良時代に集中しており、東大寺戒壇院四天王像、法華堂執金剛神像、日光・月光菩薩像を始め新薬師寺十二神将立像など素晴らしい仏像があります。しかし、木彫像が彫刻界の主流となった平安時代以降の塑像の作例は稀で、現在の仏師で塑像を作製しておられる方はおられないのではと思います。塑像で初めて仏像を作った後、木彫による仏像彫刻もやりたかったので、無名塾に入会させて頂き、馬淵先生から塑像も含めた製作の指導を受け、塑像の広目天については彩色をして完成しました。そして、現在は塑像と木彫を交互に製作しています。
塑像の特徴としては、私のような木の骨組みに発泡スチロールで概形を製作し、粘土を盛りつけて細部造形をする製作法なら、材料が非常に手に入りやすく、安価であること、大きな像を作りやすいことがあげられます。(これまでに塑像仏は7体制作、そのうち最も大きい作品は月光菩薩で、像高137cmです。) 昨今、彫刻用の檜が高騰し、材料入手が難しい状態ですので、とてもありがたいです。
粘土については最初はホームセンターで売っていた子供の工作用の紙粘土を使っていたのですが、数年前からその材質が落ち、製作しにくくなったので、今はナピア(日本教材製作所・ヨドバシカメラの通販で購入可能 1個300円程度)という粘土を使っています。この粘土は造形層の厚さ(大体は発泡スチロールの上に数mm程度の厚さで盛り付けています)にもよりますが、製作後ほぼ1~2日で硬化します。 木彫の場合は一旦削ると、元には戻せないので、削るか削らないかの判断に迷うことがよくあります。しかし、塑像の場合は一旦削っても再度盛り付けできるので、失敗を恐れずに納得のいくまで何度も修正ができるのが、製作上の最大の利点だと思います。硬化後の硬さは木とあまり変わらないので彫刻刀で容易に削れますし、木目や木口がないので削りやすいです。しかし、彫刻刀の痛みは早いようです。 概形材として使っている発泡スチロールは成形しやすいですが、静電気で体に付着するので家中にゴミが広がり、家族に不評です。
造形後の彩色は、ポスターカラーを使って自分でしていますが、対象仏の製作当時の彩色が不明な場合が多いことや、高度な技術が必要な複雑な模様や彩色が施されている場合が多いので、中々思うようにはいきません。広目天の場合は自分なりの色柄を考えました。鎧の亀甲紋は本来は截金にしたかったのですが、できるはずがないので、金色のサインペンを使って截金風に描きました(図5)。
塑像の欠点は彩色しないと色が白っぽいので、木彫に比べて崇高さが劣るようです。木彫の場合は彩色しなくても仏像の雰囲気は出ますが、塑像の場合はうまく塗れないと仏像としての有難さが下がるという感じはあるかもしれません。また、耐久性については、ほぼ10年前に造形した第一作の広目天には、一部ヒビが入っていますので、木彫よりは傷みやすいかもしれません。
いずれにしても、これからも木彫と塑像の両方の製作を楽しんでいければと思っています。
図1 仏頭と胴体の木組み
図2 発泡スチロールによる概形を張り付けた所
図3 粘土による細部造形
図4 完成した塑像
図5 彩色した塑像